バニラビーンズのストーリー

たくさんの手がつむぐ香り――バニラビーンズのストーリー

東アフリカの小さな国 ウガンダは、バニラの産地のひとつです。アフリカ最大の湖 ヴィクトリア湖のほとりに位置するこの国で、どんなふうにバニラがつくられているかご紹介しましょう。

ウガンダの地に新たな産業としてバニラビーンズ生産が持ち込まれたのは、英国植民地時代。以後、盛衰を経ながら今日まで続いています。バニラ生産はウガンダととても相性がいい特徴があるのです。

バニラが人手を要するのは、栽培だけではありません。あの独特の香りを生み出すための「キュアリング」と呼ばれる加工工程には、気が遠くなるほどの手間ひまがかかっています。人口増加率が年率3%を超え、世界第3位の勢いで人口が増えているウガンダ。人口の7割近くが農業に従事しているとされるこの国ですが、気候変動などの影響もあり、有効に利用できる一人当たりの農地はどんどん小さくなっています。そのため、農業と結びついて多数の雇用を生み出すことのできるバニラの加工は、まさにうってつけの産業。バニラ工場を訪ねると、たくさんの人があの魅惑的な香りのために立ち働いています。

工場に入荷したばかりの加工前の生のバニラビーンズは、太い「ささげ豆」のような形状。この状態では、まったく香りはありません。

まずきれいなものが選り分けられ、水洗い。

そしてたっぷりのお湯でさっと湯がかれるところから加工が始まります。

火を通された豆は、いったん専用の毛布にくるまれて、湿度を一定に保たれたうす暗い倉庫へ。発酵を促すため、48時間そのまま寝かされます。

その後、昼間のうちに毛布から出して、工場の庭に並べた台の上に広げられ、天日干しすること2ー3時間。このとき、豆どうしが重ならないようていねいに広げて並べる作業が発生します。

ふたたび毛布にくるまれて、倉庫でひと晩。翌日も同じように2-3時間の天日干し、と思えば、さっと毛布にくるんで、倉庫にしまう……この一連の作業、なんとたっぷり3か月間も繰り返されます。

こんなに面倒な工程を経てはじめて、豆がほどよく発酵し、あの香りのもととなる酵素「バニリン」が生成されるのです。

繁忙期には、工場の庭の天日干し台は乾燥中の豆で埋め尽くされ、工場には200人近い近隣住民が働きにやってきます。現金収入につながる産業がほかにないこの地域では、バニラ加工で得られる収入が医療費や子どもたちの学費に直結しています。炎天下の仕事は過酷ですが、みんなたわいないおしゃべりをしながら楽しそう。

楽しみは休憩時間に飲むお茶。砂糖で甘みをつけ、バニラの香りと一緒に味わうのだとか。