はちみつ

人と自然をやさしくつなぐ ? ウガンダ はちみつのストーリー ?

とびきり甘くて、ほんのすこしだけほろ苦い、ふかい味わいのはちみつ。ウガンダの大地に自生する木々の花から集められた蜜は、自然の世界と人間の暮らしの結びめの象徴なんです。

ウガンダの誇る野生動物の王国、マーチソン・フォールズ国立公園。この国立公園エリアに隣接するホイマ県が、このはちみつの主な産地です。たくさんの野生動物のすぐそばで暮らす――どんな感じか、想像がつきますか?庭先でサルに出会い、散歩に出かければバッファローの親子に遭遇?なんだか楽しそうでもありますが…。

ウガンダの人口増加率は年率3.4%。実に世界第3位の勢いです(2012年)。数が増えるのに伴い、人間の住む地域もどんどん広がっています。住むところだけではありません。それだけの人間が食べていくための食料をつくる農作地も必要です。人間の世界はどんどん拡大し、もとはお互い離れて住みわけていた野生動物の世界をじわじわ侵食しているのが現状なのです。

その結果、野生動物との間のトラブルが増えています。交錯する人間と動物の世界でそれぞれの利益がぶつかり、摩擦が起きているのです。なかでもとりわけ深刻なのが、象による被害。人を背中に乗せるほどおとなしいアジアゾウと違って、アフリカゾウは気性が激しく獰猛であることが知られています。畑を荒らしてめちゃくちゃにしてしまったり、遭遇した人を襲ったりする事件が次々と起こっています。

そうした被害を防ぎ、しかも手っ取り早く収入も得られて一石二鳥なのが、皮肉なことに密猟です。狩猟禁止の国立公園内でも、動物が撃ち殺され、肉や牙や角が密かに売買される事例が後を絶ちません。ただでさえ生息地がおびやかされている動物たちが、さらに銃で行き場を追われているのです。しかし、その地に暮らし自分たちの生命を守り、生きていくために動物を殺める人びとを安易に責めることはできません。

増えてしまった人間と、追いやられる動物たち。お互いに傷つけあうことなく、それぞれの暮らしを平和に営んでゆく方法は、ないのでしょうか――実はその答えのひとつが、養蜂なのです。

オーストラリア出身のサイモン・ターナーは、2005年からウガンダで持続可能な養蜂の普及と、はちみつ製品の販売を通した地域の活性化に取り組んでいます。彼が当初たったひとりで始めたMalaika Honey社(“Malaika”はスワヒリ語で「天使」を意味します)は、今では首都カンパラと、ウガンダ北部を中心としたはちみつ産地に多数のウガンダ人スタッフを抱えるに至っています。

この地域で伝統的に行われていた養蜂は、煙でいぶしてミツバチを追い出したあとの巣をたたき壊して蜜を集めるというもの。これでは、ミツバチは巣を失ってさまようことになってしまいます。サイモンはこの方法に代わり、何度も繰り返し利用可能な巣箱を設置して、ミツバチを傷つけずに蜜を取り出す技術を普及しようとしています。この改良型巣箱を用いると、集められる蜜の量も格段に増え、ときには倍以上になることもあるとか。

さらに、この巣箱の設置と移動のしやすさを利用してサイモンが考案したのが、“ビー・フェンシング(蜂の柵)”という方法。どうしたわけか、象は蜂が苦手なのだそうです。この性質を利用し、象に入ってきてほしくない領域と野生動物生息地域の境界線上に、一定間隔で点々と蜂の巣箱を設置します。すると、まるで柵をつくったかのように、象の侵入を防ぐことができるのです。

ビー・フェンシング導入後、象との遭遇は激減。象に踏みつぶされる人も、射殺される象も減ったということです。あたかも人と象がお互いに傷つけあうことなく暮らせるちょうどいい距離をミツバチがとりもってくれているかのようですね。
さらに、はちみつを販売して対価が得られれば、密猟をする必要もなくなります。またミツバチが受粉を助けてくれるので果樹や野菜の実りもよくなり、農業の収入も向上!いいことづくめです。

人間と自然をやさしくつなぐ、ちいさなミツバチの贈りもの――それがウガンダのはちみつです。